なぜ企業経営に「感謝」が大切なのか?〜脳を活性化する「感謝」の秘密〜
有名な経営者は、口々に感謝の大切さを語っています。たとえば、京セラ創業者で名誉会長の稲盛和夫氏は「生きていることに感謝する」ということを言われています。
ところが、企業研修で「感謝」と言われても、ピンと来ない方も少なからずおられるでしょう。なぜ企業経営に「生きていることに感謝する」ようなことが大切なのでしょうか?
もくじ
感謝には2種類ある
米国・カリフォルニア大学リバーサイド校、アルメンタ博士らは、感謝を「恩恵的感謝」と「普遍的感謝」次の2種類に分け、それらがもたらすものを明らかにしています。
恩恵的感謝(Doingの感謝)
ポジティブな成果を得たから感謝する。自分に良いことがあったと解釈できるときに感謝するのが「恩恵的感謝」です。誰かに何かをしてもらったから感謝する、何かをもらったから感謝する、というのは、「恩恵的感謝」になります。所為(Doing)によるので、「Doingの感謝」とも言います。
普遍的感謝(Beingの感謝)
感謝の気持ちをいつも感じている心のあり方(Being)が「普遍的感謝」です。「生きていることに感謝」「家族や仲間が存在してくれることや一緒にいられることに感謝」など、あらゆるものに感謝の気持ちを感じている状態です。「恩恵的感謝」は「普遍的感謝」に一部です。
それぞれの「感謝」がもたらすもの
「恩恵的感謝」だけをしていると、エゴが強くなり、次第に気持ちが暗くなり、長期的には鬱傾向を強くするという結果が出ています。「恩恵的感謝」だけの人は、何か良いことがないと感謝できないので、自分の調子が良くないときや何かつらいことが起きたときなどにはとくに、気持ちが沈んでしまいます。
一方、「普遍的感謝」は成長意欲が増大し、心のエネルギーが強くなってくるので、困難に立ち向かう勇気が持てるようになるのです。「脳磨き」で目指しているのは、「普遍的感謝」です。何か特別な良いことがあったから、何か得することがあったから感謝するのではなく、常に感謝の気持ちを抱いている脳の状態を作っていきます。
脳回路にポジティブな変化をもたらす「感謝」
感謝は脳を活性化する
「感謝」と「怒り」。脳では何が起きているのか?
韓国、ヨンセ大学のキョン博士らの研究です。 被験者に「感謝のワーク」を行ってもらい、そのときの脳の状態を調べました。 感謝しているときには、脳内で複数の領域がプラスに繫がり、活動が活発化します。 一方、怒っているときには、繫がりが弱くなり、その領域の活動が低下してしまうことがわかったのです。
もう少し具体的に言うと、側坐核(大脳辺縁部に存在する神経細胞の集団)をベースにした機能的繫がりが中側頭回(側頭葉にある脳回のひとつ)で強くなり、一方で被験者が怒りを感じたときには繫がりが弱くなりました。
ネガティブな状況でも脳を活性化する「感謝」
この研究では、人生にとても幸せを感じている人(=自分の人生に感謝できている人)は、ネガティブな状況に陥ったときでも、前向きに脳を活性化できるという結果も出ています。
「普遍的感謝」は免疫力をアップする
インターロイキン6の血中濃度と感謝の関係
シンガポール・シンガポール国立大学、ハータント博士らは、1054人の被験者 に協力してもらい、インターロイキン6の血中濃度と感謝についてのアンケートを取りました。インターロイキン6とは身体が炎症を起こしているときにたくさん出るタンパク質で、炎症反応の指標としてもよく使われます。 その結果、何かとくに良いことがなくてもいつも感謝の気持ちを持っている人は、インターロイキン6が低く保たれていることがわかりました。
感謝は寿命を延ばす
身体が慢性的な炎症を起こしていると、寿命が短くなったり、不健康になったりします。 常に感謝の気持ちを持っている人は、身体の炎症が抑えられ、その指標となるインターロイキン6の血中濃度が低く抑えられるということがわかってきたのです。 またストレスは、免疫力を弱めるなど身体にリスクを与えますが、感謝はこれらのリスクを低減します。そして、大変な状況もプラスに捉え、自分の糧に転換しやすくしてくれます。
問題解決も早くなる「感謝」の効用
さらに、常に感謝の気持ちを表現する人は、高い免疫機能を獲得できることもわかっています。 他にも、いつも感謝をしている人は、困難なことに遭遇しても問題解決に早く行き つくことができ、大変な状況にも順応しやすく、鬱になりにくいといった結果も出ています。
感謝脳を鍛える脳トレ研修
脳トレ研修では、日々の仕事を通して「脳磨き」をする習慣を身につけることができます。「感謝」というと、宗教的で受け入れにくいという方がおられますが、「感謝」することのメリットを脳科学的なエビデンスとともに学ぶことで、脳のトレーニングとして「感謝」をするようになります。脳磨きを続けることで、最初は「恩恵的感謝」が中心だった人たちが、共同体思考の脳回路が鍛えられて、自然な形で「普遍的感謝」ができるようになります。「普遍的感謝」、あるいは、「生きていることに感謝する」を身につける脳科学をベースにした「脳トレ研修」は、脳を最大限に活性化させられる企業研修であり、企業経営を大きく改善できるものなのです。