利他の心の不思議
今日は、利他の心の不思議ということについて、お話しさせていただきます。
これは皆さんも経験があると思うのですが、自分が苦しい状態にあると、人に対する思いやりがなかなか発揮しにくくなると思います。もちろん、僕も皆さんと同じです。自分が苦しいときには他の人まで気が回らない。
ところが、利他の心には、とても不思議なことがあると中国・北京大学の研究からわかってきました。
自主的に献血をして人の役に立とうという人たちのグループと、同じ時間を使って自分の好きなことをしている人たちの2つのグループで、いろいろな負荷を掛けていきます。
同じ負荷を掛けているのですが、誰かの役に立とうという気持ちで献血をした人たちのグループは、自分の好きなことをした人たちに比べて1.6倍の負荷に耐えられることが分かってきました。
これはどういうことかというと、脳の成長サイクルというのを回しながら、人の脳は進化、成長しています。
成長サイクルを回せば回すほど自分の能力が高まっていくのです。
脳の成長サイクルを回すとは
例えばオリンピックで金メダルを取るというのは、その種目において誰よりも成長サイクルをたくさん回した人です。
自主的に利他の気持ちで献血をした人が1.6倍の負荷に耐えられるということは、同じだけの負荷が掛かっても、それだけたくさん脳の成長サイクルを回すエネルギーを持っているということになります。
利他の心の実践ということを普段からしていると、自分が成長するエネルギーを高めているという、不思議なことが起こっています。
義務では効果がない
そして、利他の実践ですが、義務としてすると効果がないということも分かっています。
同じ、北京大学の研究で、困っている子どもたちのために自発的にボランティアをした人たちのグループと、義務として「あなたたちはこれをしなければいけません」と割り当てられた人たちのグループでどこまで苦しい負担に耐えられるかを調べました。
すると、自発的にボランティアをしよう、困っている子どもたちを助けようという気持ちの人たちのグループのほうが、より大きな負荷に耐えられたのです。
自発的な利他の実践をした人たちの方が、たくさんの脳の成長サイクルを回して自分を進化・成長させるエネルギーが強いということが分かってきました。
「利他というか、思いやりが大事」というのは昔からいわれていることです。
昨年、亡くなられた稲盛和夫さんは、利他の心の大切さを説いてくださっていました。利他は他の人のためにやるものですが、実は自分の脳を進化・成長させる原動力になっているということが脳科学の研究で分かってきたということです。
皆さんの人生を少しでもよくしていただくために、何かの参考にしていただけるとうれしく思います。今回もお読みいただきまして、ありがとうございました。